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新築jazz喫茶CANDYのチューニング

VOL.7 新築jazz喫茶CANDYのチューニング

千葉市稲毛、駅を降りてわずか2分。商店街から道一本を隔てた住宅街に一歩踏み込んだところに小洒落た店ができた。JAZZ喫茶CANDY。以前にも紹介したが、そのころは駅の反対側、ビルの地下の暗闇にあった。
ところが昨年春、CANDYのオーナーは突然ヒラメいたらしい。あれよあれよという間に店を新築して広く明るい雰囲気に店を豹変させた。
僕が、オーディオの友人でEMT930を3台も4台も所有し、そのゴム製アイドラまで精密研磨してしまう人を紹介したのがきっかけらしい。選び抜いた木材をふんだんに使った瀟洒な喫茶店を営むその友人の店舗は、明るく健康的だ。
だから新店舗への移転は表面上は、70年代に流行した黒ずくめ店舗からの脱出を計ったかに見える。けれど、僕は密かに思っている。オーナーの林さんは、旧店舗のステレオスピーカーの左右がくっついてしまうような、最悪の音響空間からの脱出を望んだにちがいない、と。

2002年4月。店舗が完成した。スタジオ設計の大ベテラン、若林音響の若林社長が大御所的見地でアドバイスをなさったその空間が完成した。響きを生かした無駄の無い設計。どんな高価なオーディオ装置をみても羨ましく思ったことは無い僕だけど、正直にいって、この空間は羨ましい。
機材は旧店舗のものをそっくり持ち込んだ。スピーカーを新調する計画も、いっとき浮上したけれど、候補に挙がったものはドライブアンプも含めて1000万円近くかかるので断念したそうだ。
広い空間をわずか140リッターの箱に入ったJBLの15インチで鳴らせるのか?
ご本人は相当な心配をしていたようだ。けれど相談された僕は断言した。全く心配ない、と。
それよりも、と、電源周りとスピーカーのセッティングに気を配るようにアドバイスした。その結果、30個以上もあるこの一軒家の壁コンセントに、すべて独立のブレーカーがついてしまった。ブレーカーは分厚い木製のボードにマウントされている。ブレーカーを固定するネジも全て非磁性体ネジ。パワーアンプなどに給電するコンセントは、周囲に一切の金属を廃した露出コンセントタイプだ。これはイルンゴ製で、電極は純銀が厚くメッキされている。

4月の某日曜日。
オーディオ好きな常連さんたちも集まって、スピーカーをあげたり下げたりのセッティング調整をすることになった。
このあたり逐一詳しく書くと、だらだらと長くなるので省略。けれど一種の公開チューニングとなったので、皆さんが一番驚かれたことを書いてみよう。
左右の音質の違い。その原因は2種類。 一つは置き台とウッドブロックとSP本体との間に存在するわずかな位置ずれ。左右の置き台の、木の目を揃えることで、急激に音質が揃うということ。 もう一つは、パワーアンプの位置。左右のSPから等距離のところに置かないと、定位はおろか音質までアンバランスになること。
立ち会ったマニアの方たちは、とても驚いていらした。

CANDYの装置全体の中で、他のグレードに比して、スピーカーBOXとネットワークあたりに未解決の箇所がある。そのせいか目に見えるところだけを攻めると、内部の未開発地域がときどき悲鳴を上げる。
で、その一歩手前のところに、熟した果実の味があるようだ。でも、こういうときはコンスタントに音を維持していくことにも、大変な苦労がいる。
先日もEMT930プレーヤの置き台(鉄製40kg)を導入したら、隣のCD(スチューダ730)の音がすっかり調子を崩し、悪戦苦闘したそうだ。

後日、アナログレコードをアサリ続け、最近オーディオにもすっかり目覚めてしまった某カメラマン氏を連れて訪問したところ、大感激。彼はその後、暇を見つけては遊びに行っているらしい。店内の写真は彼の作。(注:クリックで大きな写真が開きます)

建築間もないこの夏、コンクリートが出す猛烈な湿気に対抗して、ドライヤをだしたり、ねじ回しでネジを締めたりゆるめたり・・・、音の維持にかなり苦労しているらしい。

連日9時間。日々変わる音にめげず、オーディオに真っ正面から向かっているjazz喫茶CANDY。日本全国で、今時珍しい店である。
是非、お立ち寄りを。
当然、オーナーの感性からなる音だが、ちょっとだけ、イルンゴの音の匂いも下地として混じっている。
もし調子よく、小型SPとは思えない伸びやかな朗々とした音が出ていたら、拍手を!
http://members.tripod.co.jp/jazz_candy/
(043-246-7726)