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微少信号にきをつけろ!

最近、インシュレータを開発した。こういことやっていると、一部のイルンゴファンから、アクササリばかりやらず、コンポ本体を早くやれ、とお叱りをうけたりする。けれど、僕には周辺機材を開発しないといけない、れっきとした理由があるのだ。 だから少しばかり、言い訳をさせて欲しい。

80年代に海外で高級ケーブルメーカーが話題となり、90年代は日本でもケーブルが全盛時代となった。同様に、インシュレータやら小物の類までが、多種多様、店先を賑わしている。 ある店などコンポーネント本体の売り上げよりアクセサリーの方が多い、とさえ言われる。
この原因はなにか?
時代の推移を見ての推測だが・・・。
従来のアナログプレーヤに変わってCDプレーヤがオーディオの主流になった頃と、アクセサリ類の台頭が奇妙に一致している、と僕は思う。もちろん直感的やぶにらみだから、統計学的数字の根拠はない。
CD時代になって、アナログ時代よりダイナミックレンジの下限が、マイナス方向におよそ36デシベルほど下がった。家庭での再生時、最大音圧は、昔も今もそう変わらない。とするとデジタル時代は同じ再生系ラインが扱う信号の下限が、単純に下がった、といえるのではないだろうか。
CDプレーヤの出力も、プリアンプもパワーアンプも、昔よりずっと微細な信号を扱っているのだ。

古くからのオーディオマニアの中には、アクセサリーにこだわることを、本筋から外れているかのように揶揄する向きもある。大体そういう方は、CDの音をアナログ時代の音にして、つまり、細かい音を丸めてバランス取る、そういう傾向を感じる。だから、そういう方の音は空間、余韻が少なく、世間では音像派と呼ばれているようだ。
逆にCDで徹底追及した人が出すアナログの音は、微細な音による空間表現も得意であるように思う。
ぼくのようにパッシブのフェーダーを使うとすぐ気付くことだが・・・。
パッシブフェーダーはDACやCDプレーヤの出力を、単に絞るだけ。僕は夜中、40デシベルとか、あるときはマイナス60デシベルくらい下げて聴く。そんな小さな音で何が聴ける、なんて言わないで欲しい。
素っ裸になると部屋の空気のわずかな動きまで感じられるように、深夜の微少音は、音のミクロの動きまで聞き取れるようになる。
で、そのときパワーアンプに入力される信号レベルは?
CDプレーヤの出力が2Vだとすると、フェーダーの出口は、マイナス60デシベルのときで2mV。これは曲の中の最大音だから平均値は、さらに1桁下がって0.2mV。さらにさらにピアニッシモだと、・・・・、おいおい、トンデモナイ微少信号だ。
つまりパワーアンプは、かつてのMCカートリッジ用ヘッドアンプ並の信号レベルさえも、場合によっては扱わされるのだということを認識して欲しい。
けれど、一方、同じ筐体の中で、あるときは数100wの大出力も要求される。しかも放熱もしないといけないからと、放熱ファンのモーターが唸っているアンプさえある。
こういう機器はもう僕の神経とは相合れない。 過酷な命題を背負った機器。それがパワーアンプなのだ。
けれど、MCヘッドアンプのような繊細な作りをしたパワーアンプがどこにあるのか。(ほんのわずかだけ、相当意識しているものがあるけど)
微少信号扱う意識がないから、マイクロフォニックノイズに対する構造が取られていない。
かくしてパワーアンプは、機器の置き台やインシュレータが絶大な効果を発揮する場所となった。
なに、我が家はパッシブフェーダーでなくプリがあるから平気だろう、って?
それは大きな勘違い。
プリアンプは、文字通りアンプ、増幅器だ。その増幅する分だけ先に、プリ内蔵されているボリウム(フェーダーと同じ役割)で、もっと絞らないといけない。そうなるとプリは、さらに超微少信号を扱うことになる。
すなわちプリのラインアンプにはMCヘッドアンプよりさらに、少なくと1桁下まで、僕の場合は要求したくなる。
残念なことに、現代のアナログ回路のSNは理論的に、その領域を満足できないことが判明している。
プリを入れると、聞きやすいバランスの取れた音になることもある。しかし良く聴くと、細かい音を丸めているのである。情報を欠落させてバランスを取る。オーディオでは昔からある、一種の「逃げ」の手法だ。CDプレーヤにトランスを入れるのも、根本的には同じ理屈である。
僕はいいたい。
デジタルのDレンジは既に素晴らしい。
けれど、もうすでに、電気信号として気楽に、電気の理屈をを知らないくてもいいはずのオーディオユーザーが扱うには、過激なほどデリケートな領域に入っているのではなかろうか。
微少信号を扱う電子回路の実装に詳しい方なら、世界中の多くのオーディオ機器の大半が、磁気や振動に対してきわめて無頓着な設計なことに気づくだろう。
CD登場の初期、音が悪いとされたのも頷ける。
アナログ時代とさして変わらない筐体構造では、置き台、インシュレータの影響が絶大なのは当然の帰結のように思えてならないのだ。
しかし、イルンゴの製品がそういう環境で使われるなら、なんらかの対策をしなければ正当な評価も得られず、実力も発揮できない。これは自分で解決するしかない。
で、僕はここ数年、アクセサリと言われる周辺機材の開発に力を注いできたのである。
おかげで・・・。
イルンゴのオーディオボードと皮を積層したインシュレータが、非常に好評です。